5月号|仮想通貨マンスリーレポート

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執筆者紹介

プロフィール

証券アナリスト・中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。

その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。

その後は、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。

さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。

仮想通貨トレードに関しても、仮想通貨取引所コインチェックにて、トレーディング業務に従事した経験を持ち、金融業界に精通して幅広い知識を持つ。 金融業界に精通して幅広い知識を持つ。

【保有資格】証券アナリスト

5月の仮想通貨市場の流れを解説

5月大幅下落傾向の背後

5月の仮想通貨市場は全体的に大幅下落する動きとなった。

5月の仮想通貨市場は前半にイーロン砲と呼ばれていたテスラ社のイーロンマスクのツイートに振らされる展開。

5月中旬のテスラ社がビットコイン決済を中止するという報道を受けて急落し、54,000ドル台から50,000ドル台前半まで急落する動きに。

テスラ社の報道によってビットコインが下落したことを嫌がったのかイーロンマスクが再度ビットコインの売却は検討していないと報じたことで一時的な反発を見せたが、持続性がなく戻り売りが続く展開。

その後下落トレンドが明確となる中、複数の仮想通貨取引所がシステムダウンを起こしたことで、相場はクラッシュし一時30,000ドル付近まで急落。

その後自律反発しようとするも、中国の仮想通貨決済の禁止やマイニング規制の厳格化、1ヶ月で高値から50%程度の大幅下落を見せており、仮想通貨市場の値動きが大きく出ている月となっている。

5月のトレンド

仮想通貨市場のフローは5月に仮想通貨取引所への資金流入が急増しており、投資家がビットコインの相場が崩れていることから、保有しているビットコインを売却しようとする動きが出ていることが、入出金のフローから見て取れる。(下記チャート2参照)

米国市場は4月から消費者物価指数の大幅上昇が続いており、インフレ懸念がマーケットで話題となった。

インフレが進行する場合は通常金融政策としては景気の過熱感を抑えるために政策金利の引き上げを行って、景気を抑制することがセオリーとなっていることから、5月は雇用統計、そして雇用統計の数字も受けたFOMCでのFRBのスタンスを確認することにマーケットは集中していた。

FOMCではマーケットが予想外のタカ派姿勢となり、2022年に利上げ見通しを強めるようなスタンスが確認されたことで、米債金利は上昇し10年金利は1.59%まで10bpほど上昇。(1bpは0.01%)

金利が上昇する方向で反応したため、株価は大幅下落する動きになり、ビットコインもリスクアセットに連動して下落基調を強める動きとなった。

現在ビットコインはリスクアセットに連動するような動きにはなっていないものの、株価の下落には連動することも度々あるため、米国株の動向には注意を払っておくべき環境。

現在はコロナショック後世界的な金融緩和から縮小方向へ方針転換が迫られている状況であるため、この緩和縮小路線による影響は仮想通貨市場にとっても小さくはないと考えられる。

ビットコインのテクニカル分析

 

ビットコインのチャートのテクニカル指標を利用してチェックすると、マーケットが注目していたのは下記の3点だった。

注目ポイント

1.200日移動平均線を明確に割れてきていること
2.デットクロスを形成していること
3.ヘッドアンドショルダーが綺麗に形成されていること

最初にチャートは2020年下旬から上昇トレンドを形成し、50日移動平均線に沿って綺麗な動きが4月まで継続しており、その間にトレンドフォロワーがポジションを積み増す動きが淡々と続いた。

しかし青色の○印で天井を示唆されるヘッドアンドショルダーを現在形成しており、ネックラインを割れてくると急落。

このタイミングはテスラ社がビットコイン決済を中止したことがトリガーとなって売りフローが増加、節目のサポートラインを割れると下落スピードを加速される格好となる。

その後複数の仮想通貨のシステムダウンによって大幅下落を見せたことで、200日移動平均線を明確に下抜けし、サポートラインとして機能していた200日移動平均線は、一点レジスタンスラインに転じた。

その後50日移動平均線が200日移動平均線をデットクロスするような動きが見られており、ビットコインは昨年から続いていた上昇トレンドが明らかに弱まっている様子となっている。

 

チャート2

次にチャート2は外部のウォレットから仮想通貨取引所に資金がどれだけ流入しているかを表しているチャートである。

縦の棒グラフはその時点における仮想通貨取引所への入金フローの表しており、黒の折れ線グラフがビットコインのチャートとなっている。

上昇トレンド時には仮想通貨取引所への資金流入はそこまで大きくなかったことが見て取れる。

一方で直近では価格が大幅に下落する過程で仮想通貨取引所への流入が見て取れる。

これは長期保有目的で保有するため仮想通貨取引所から外部のウォレットに資金を移していたものの、直近の下落する動きを見て、ポジションを手放すために仮想通貨取引所にビットコインを移動させ、売却に動いたものと考えられる。

ここから覚えておくべきことは仮想通貨取引所から資金が流出している場合はビットコインが短期的な売り圧力が減退していることを意味することになるため、価格が下落した局面で流出が増えていくような場合は、長期的な投資家がビットコインを保有する動きが出ていると考えることになる。

チャート3

次にチャート3のアクティブアドレスの動きをチェックすると、2020年からの価格の上昇によってビットコインのアクティブアドレスは大きく増加する動きとなった。

しかし価格が600万円以上で推移しているところでアクティブアドレスの増加は止まり、2021年4月あたりで一旦大幅下落するような動きとなっている。

そしてその後価格が下落する動きを見てアクティブアドレス数も急減していることから投資家がビットコインを手放す動きが出ていると考えるのが自然とチャートから判断でいることになる。

チャート4

チャート4はビットコインのトランザクション手数料の推移とビットコイン価格を表しているが、足元ではヒストリカルローの水準まで低下してきており、ある程度下落は進んだと考えられる水準に到達。

ここから更なる低下を見せる場合は2019年の仮想通貨市場の冬の時代と同様な環境となるため、注意したい水準か。

 

チャート5

最後にチャート5は短期ビットコインホルダーと長期ビットコインホルダーの利益や損失の割合のチャートである。

足元の急落によって短期ビットコインホルダーはビットコインをロングで保有している状態なことからほとんど評価損失が出ている状況であり、かなり厳しい環境が続いていると判断できる。

一方で長期ビットコインホルダーは下落した水準でも評価益の状態が続いており、足元の急落のタイミングでポジション量を積み増していることが判断できる。

今後のビットコインの動向のポイントとしては各国の仮想通貨に対しての規制の厳格化がどこまで進むのか、そして、長期的なファンドや大口投資家がマーケットから離脱するのか、積み増す動きを取ってくるのか等フロー動向が大きなポイントとなるだろう。

また市場全体を俯瞰して考えた場合に、各国が金融緩和路線から縮小に動く中で、市場に余っていた資金に余裕がなくなってくると考えられる。

現在の動きが加速した場合仮想通貨市場に流入する資金も減少するため、大きなフローとしてチェックしていくべきポイントとして捉えておくべきだろう。

 

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